No.372 - ヒトの進化と "うま味"
No.360「ヒトの進化と苦味」の続きです。味覚の "基本5味" は、甘味・塩味えんみ・酸味・苦味・うま味で、このそれぞれに対応した味覚受容体(= 舌の味蕾みらい細胞の表面にある味覚センサー)が存在します。
味覚受容体のうち、苦味受容体だけは多種類あり、それは霊長類(サルの仲間)の進化と密接な関係があります。つまり小型の霊長類では、マーモセットが20種、リスザルが22種、メガネザルが16種などですが、大型霊長類ではそれよりも種類が多く、ゴリラは25種、チンパンジーは28種、ヒトは26種です。
多くの苦味受容体を持つに至ったのは、進化の過程に深く関係がある。苦味受容体は、ヒトの祖先である霊長類が「主食を昆虫から植物の葉へと変えていく過程で増えていった」と北海道大学大学院 地球環境科学研究院 助教の早川卓志さん(博士)は解説する。早川さんはゲノム解析を通じて野生動物の行動や進化を研究する。
霊長類の祖先にあたる哺乳類は昆虫を主食としていたが、体が大きくなるにつれて虫だけでは栄養が不足し、葉に含まれるたんぱく質を摂取するようになる。植物はもともと毘虫に食べられないよう多様な毒を蓄えており、ヒ卜の祖先は「それを避けるように『苦味感覚』というセンサーを発達させ、受容体の数も増やした」(早川さん)。従って、植物を食べない哺乳類では苦味感覚の出番はあまりなく、受容体の数も少ない傾向にある。肉食のネコは霊長類の約3分の1、イルカ・クジラに至ってはゼロだ。
No.360「ヒトの進化と…