No.375 - 定住生活の起源

No.232「定住生活という革命」の続きです。最近の新聞に日本列島における定住の起源に関する記事があったので、No.232 に関係した話として以下に書きます。 変わりゆく考古学の常識 2024年8月7日の朝日新聞(夕刊)に、  定住の兆し 旧石器時代に  変わりゆく考古学の常識 との見出しの記事が掲載されました。これは、東京大学大学院の森先もりさき一貴かずき准教授が2024年度の浜田青陵賞(考古学の顕著な業績に贈られる賞。第36回)を受賞されたのを機に、記者が森先准教授に取材した記事です。見出しの通り、新しい発見によって考古学の従来の常識がどんどん書き換えられている、との主旨の記事です。 ちなみに見出しの「旧石器時代」ですが、日本列島に現生人類(ホモ・サピエンス)がやってきたのが約4万年前で、そこから縄文時代が始まる約1万6千年前までを世界の先史時代の区分に合わせて「旧石器時代」と呼んでいます。「旧石器」は打製石器、「新石器」は磨製石器の意味ですが、日本では縄文時代以前にも磨製石器があったので、石器の種類での時代区分はできません。 新たな発見や研究の深まりで通説が塗りかわるのもこの世界の常だ。たとえば縄文時代の到来を象徴する土器はかつて、1万年ほど前に最終氷期が幕を閉じて環境の変化とともに出現したとされてきた。ところが近年、土器の誕生は1万6千年ぼど前にさかのぼり、氷期に食い込む。かつての常識はもはや通用しない。 同様に「定住…

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No.374 - マイノリティは過小評価される

No.347「少なくともひとりは火曜日生まれの女の子」は、偶然の出来事が起こる "確率" を考えることは人間にとって難しい、というテーマでした。イギリスの著名な数学者、イアン・スチュアートは次のように書いています。 確率に対する人間の直感は絶望的だ。偶然の出来事が起こる確率をすばやく推定するように促されると、たいていはまったく間違った答えを出す。プロの賭博師や数学者のように鍛錬を積めば改善はできるが、時間も労力も必要だ。何かが起こる確率を即断しなければならないとき、私たちの答えは誤っていることが多い。 イアン・スチュアート   「不確実性を飼いならす」 (徳田 功・訳。白揚社 2021) スチュアートの本には次のような設問が載っていました。前提として、女の子と男の子は等しい確率で生まれてくるとします。また、赤ちゃんが生まれる曜日は、日・月・火・水・木・金・土、で同じ確率とします。 ① スミス夫妻には2人の子どもがいます。2人とも女の子である確率はどれだけですか。 ② スミス夫妻には2人の子どもがいて、少なくとも一人は女の子です。2人とも女の子である確率はどれだけですか。 ③ スミス夫妻には2人の子どもがいて、少なくとも一人は火曜日生まれの女の子です。2人とも女の子である確率はどれだけですか。 ① の正解は \(\tfrac{1}{4}=0.25\) ですが、\(\tfrac{1}{3}\…

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