No.360 - ヒトの進化と苦味

今まで、ヒトと苦味の関係について2つの記事を書きました。  No.177「自己と非自己の科学:苦味受容体」  No.178「野菜は毒だから体によい」 の2つです。No.177「自己と非自己の科学:苦味受容体」を要約すると次の通りです。 ◆ 苦味は本来、危険のサインである。 ◆ 舌で苦味を感じるセンサー、苦味受容体は、鼻などの呼吸器系にもあり、細菌などの進入物から体を防御している。その働きは3つある。 ・ 細胞にシグナルを送り、繊毛を動かして進入物を押し出す ・ 細胞に指示して殺菌作用のある一酸化窒素を放出させる ・ 細胞に指示してディフェンシンという抗菌作用のあるタンパク質を放出させる ◆ さらに、苦味受容体は呼吸器系だけでなく体のあちこちにあり(たとえば小腸)、免疫機能を果たしている。 五味と総称される、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味のうち、苦味を除く4つは、その味を引き起こす物質が決まっています。 甘味 :糖 酸味 :酸=水素イオン 塩味 :塩=ナトリウムイオン うま味 :アミノ酸 です。この4味を感じる味覚受容体はそれぞれ1種類です。しかし苦味を引き起こす物質は多様で、それに対応して苦味受容体も複数種類あります。そしてヒトは、本来危険のサインである苦味を楽しむ文化を作ってきました。 ・ お茶を飲む文化…

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No.359 - 高校数学で理解するガロア理論(6)

(前回から続く)(目次)7.可解性の十分条件(続き)  7.8 可解な5次方程式  大多数の5次方程式のガロア群は、対称群 \(S_5\) か 交代群 \(A_5\) であり、従って可解ではありません(65G)。しかし特別な形の5次方程式は可解です。 \(x^5-2=0\) の根 その可解な5次方程式として \(x^5-2=0\) を取り上げ、ガロア群を分析します。この方程式の根がべき根で表現できること(=可解)はあたりまえだし、こんな "単純な" 方程式のガロア群を分析することに意味があるのかどうか、疑ってしまいます。 しかし、\(x^5-2=0\) のガロア群は可解な5次方程式のガロア群としては最も複雑なのです。方程式の "見た目の" 単純・複雑さと、ガロア群の単純・複雑さはリンクしません。以下で \(x^5-2\) のガロア群を計算します。  \(x^5-2\) のガロア群  \(1\) の原始\(5\)乗根の一つを \(\zeta\) とします。\(x^5-1=0\) は、  \((x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)=0\) と因数分解できるので、\(\zeta\) は、  \(x^4+x^3+x^2+x+1=0\) の根です。7.1節で計算したように、たとえば、  \(\zeta=\dfrac{1}{4}(-1+\sqrt{5}+i\sqrt{10+2\sqrt{5}})\) です。また、 …

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