No.355 - 高校数学で理解するガロア理論(2)

(前回から続く)(目次)2.整数の群 「2.整数の群」「3.多項式と体」「4.一般の群」の3つの章は、第5章以下のガロア理論の核心に入るための準備です。 第2章の目的は2つあり、一つは整数を素材にして「群」と、それに関連した「剰余類」「剰余群」「既約剰余類」など、ガロア理論の理解に必要な概念を説明することです。 もう一つは、第2章の最後にある「既約剰余類群は巡回群の直積と同型である」という定理を証明することです。この定理はガロア理論の最終段階(6.可解性の必要条件)で必要なピースになります。 まず、"整数の群" に入る前に、整数論の基礎ともいえる「ユークリッドの互除法」「不定方程式」「法による演算」「中国剰余定理」から始めます。これらは後の定理の証明にしばしば使います。  2.1 整数   ユークリッドの互除法  (互除法の原理:21A) 自然数 \(a\) と \(b\) の最大公約数を \(\mathrm{gcd}(a,\:b)\) で表す。自然数 \(a\) を \(b\) で割った余りを \(r\) とすると、  \(\mathrm{gcd}(a,\:b)=\mathrm{gcd}(b,\:r)\) である。 [証明] 記述を簡略化するため、最大公約数を、  \(\mathrm{gcd}(a,\:b)=x\)  \(\mathrm{gcd}(b,\:r)=y\) で表す。\(a…

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No.354 - 高校数学で理解するガロア理論(1)

今までに「高校数学で理解する ・・・・・・」と題した記事を何回か書きました。 No.310 - 高校数学で理解するRSA暗号の数理(1)No.311 - 高校数学で理解するRSA暗号の数理(2)No.313 - 高校数学で理解する公開鍵暗号の数理No.315 - 高校数学で理解する楕円曲線暗号の数理(1)No.316 - 高校数学で理解する楕円曲線暗号の数理(2)No.325 - 高校数学で理解する誕生日のパラドックスNo.329 - 高校数学で理解するレジ行列の数理 の7つの記事です。「高校数学で理解する」という言葉の意味は、「高校までで習う数学の知識をベースに説明する」ということです。今回はそのシリーズの続編で、ガロア理論をテーマにします。その第1回目です。 ここで言う「ガロア理論」とは、 方程式の解が四則演算記号と \(n\)乗根の記号(\(\sqrt[n]{a}\))で表現できる(=方程式が "解ける")ための必要十分条件を示す理論 とし、その範囲に限定します。これが、そもそもの理論の発端であり、19世紀に夭折したフランスの数学者、ガロアが数学史に残した功績でした。 例によって、前提知識は高校までで習う数学に限定し、そこに含まれない定理は全部証明することにします。ただし、複素数と複素平面の知識は前提とします。また集合論の記号(\(\in\:\:\subset\:\:\supset\:\:\cup\:\:\cap\) など)を適時使います。さらに「すべての…

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