No.346 - アストリッドが推理した呪われた家の秘密

このブログでは数々の絵画について書きましたが、その最初は、No.19「ベラスケスの "怖い絵"」で取り上げた「インノケンティウス10世の肖像」で、中野京子さんの『怖い絵』(2007)にある解説を引用しました。この絵はローマで実際に見たことがあり、また中野さんの解説が秀逸で、印象的だったのです。 『怖い絵』には興味深々の解説が多く、読み返すこともあるのですが、最近、あるテレビドラマを見ていて『怖い絵』にあった別の絵を思い出しました。15~16世紀のドイツの画家・グリューネヴァルトが描いた『イーゼンハイムの祭壇画』です。今回はそのことを書きます。 テレビドラマとは、NHK総合で放映中の「アストリッドとラファエル 文書係の事件簿」です。 アストリッドとラファエル 「アストリッドとラファエル 文書係の事件簿」は、NHK総合 日曜日 23:00~ の枠で放映されているフランスの警察ドラマです。 アストリッドはパリの犯罪資料局に勤務する文書係の女性(俳優はサラ・モーテンセン)、ラファエルはパリ警視庁の刑事(警視)です(俳優はローラ・ドヴェール)。アストリッドは自閉スペクトラム症ですが、過去の犯罪資料に精通していて、また抜群の洞察力があります。一方のラファエルは、思い立ったらすぐに(捜査規律違反もいとわず)行動に移すタイプです。しかし正義感は人一倍強く、人間としての包容力もある女性刑事です。この全く対照的な2人がペアになって難事件を解決していくドラマです(サラ・…

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No.345 - "恐怖" による生態系の復活

No.126-127「捕食者なき世界」の続きです。No.126-127は、生態系における捕食者の重要性を、ウィリアム・ソウルゼンバーグ著「捕食者なき世界」(文春文庫 2014)に沿って紹介したものでした。 生態系において捕食者(例えば肉食獣)が、乱獲などの何らかの原因で不在になると、被捕食者(例えば草食動物)が増え過ぎ、そのことによって植物相が減少する。最悪の場合は草食動物もかえって数が減って生態系の荒廃が起こり得る。このようなことが、豊富な実例とともに示されていました。 生態系における「捕食・被捕食」の関係は、動植物の種が複雑に絡み合うネットワークを形成していて、そのネットワークには「不在になると他の種に連鎖的な影響を及ぼす種」(= キーストーン種。キーストーンは "要石かなめいし" の意味)があります。食物連鎖の頂点に位置する肉食獣は代表的なキーストーン種なのでした。 ところで、最近の NHK BS1 のドキュメンタリーで、人的要因によって激変してしまった生態系を、捕食者の再導入によって元に戻そうとするプロジェクトが放映されました。その番組は、 NHK BS1 BS世界のドキュメンタリー (2022年8月9日 15:00~15:45) 「"恐怖" でよみがえる野生の王国」 (Nature's Fear Factor)  制作:Tangled Bank Studios(米国 2020) です。今回はこの番組の概要を紹介します。日本語題名に「"恐…

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