No.329 - 高校数学で理解するレジ行列の数理
No.149「我々は直感に裏切られる」で、数字に関して我々の直感が事実に反する例や、正しい直感が働かない例を書きました。その中の "誕生日のパラドックス"(= 23人のクラスで誕生日が同じ人がいる確率は 50% を超える)については、No.325「高校数学で理解する誕生日のパラドックス」でその数学的背景を書きました。今回もそういった直感が外れる例で、スーパーのレジや各種窓口の「待ち行列」を取り上げます。
No.325 以外にも「高校数学で理解する」とのタイトルの記事がいくつかあります。
No.310-311 高校数学で理解するRSA暗号の数理
No.313 高校数学で理解する公開鍵暗号の数理
No.315-316 高校数学で理解する楕円曲線暗号の数理
です。これらの記事は、高等学校までの数学だけを予備知識として、現代の IT 社会の重要なインフラとなっている公開鍵暗号を解説したものでした。高校までに習わない公式や用語を使うときには、その公式の証明(ないしは用語の説明)を記しています。今回もその方針でやります。
レジ行列の観察
ある比較的小規模のスーパー・マーケットを例にとります(仮想の例です)。この店の店長は店舗運営の改善に熱心です。店長は「ある曜日のある時間帯」のレジを何回も観察して、次のような結果を得ました。
◆ この時間帯には2台のレジを稼働させていて、1台のレジに並び始める客は1時間…