No.323 - 食物アレルギーの意外な予防法

過去に何回か書いた免疫関連疾患の話の続きです。まず以前の記事の振り返りですが、No.119/120「不在という伝染病」と No.225「手を洗いすぎてはいけない」をざっくりと一言で要約すると、 人間は微生物が豊富な環境でこそ健康的な生活を送れる となるでしょう。健康の反対、不健康の代表的なものが免疫関連疾患(自己免疫病とアレルギー)でした。そして、現代社会においては「微生物が豊富な環境」が無くなってきたからこそ(ますます無くなりつつあるので)"不健康" が増えるというのが大まかな要約です。次に、微生物の中でも腸内細菌に注目したのが No.307/308「人体の9割は細菌」でした。一言で要約すると、 腸内細菌の変調が21世紀病を引き起こす要因になる となります。21世紀病とは、19世紀末から20世紀にかけて増え始め、20世紀後半に激増し、21世紀にはすっかり定着してしまった病やまいです。免疫関連疾患、(BMIが30超のような)肥満、自閉症がその代表的なものでした。 以上は最新の生理学・医学の知識をベースにした本を紹介したものでしたが、もちろん展開されていた論の中には仮説もあり、今後検証が必要な事項もあります。 ところで、これらの共通事項は「免疫関連疾患」です。つまり人間に備わっている免疫の機構が関連している疾患です。免疫とは、 自己と非自己を区別し、非自己を排除したり、特定の非自己と共存する(ないしは特定の非自己を自己に取り込む)ためのしくみ です…

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No.322 - 静物画の名手

No.93「生物が主題の絵」では "生物画" と称して、動物・植物が生きている姿を描いた西洋絵画をみました。「生きている姿を描く」のは日本画では一大ジャンルを形成していますが、西洋絵画の著名画家の作品では少ないと思ったからです。もちろん、西洋絵画で大ジャンルとなっているのは「静物画」であり、今回はその話です。 静物画はフランス語で "nature morte"(=死んだ自然)、英語で "still life"(=動かない生命)であり、「花瓶の花束」とか「テーブルの上の果物や道具類」などが典型的なテーマです。瓶や壷などの無生物だけが主題になることもあります。 まず、18世紀より以前に描かれた絵で "これは素晴らしい" と思った静物画は(実物を見た範囲で)2つあります。No.157「ノートン・サイモン美術館」で引用した、カラヴァッジョとスルバランの作品です。 ミケランジェロ・メリージ・ダ・ カラヴァッジョ(1571-1610) 「果物籠」(1595/96) (46cm × 64cm) アンブロジアーナ絵画館(ミラノ) フランシスコ・デ・スルバラン(1598-1664) 「レモンとオレンジとバラの静物」(1633) (62cm × 110cm) ノートン・サイモン美術館 (米国・カリフォルニア州) この2作品の感想は No.157 に書きました。古典絵画なので写実に徹した作品ですが、よく見かけそうな静物を描いているにもかかわらず、じっと見ていると、それらが何かの…

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No.321 - 燻製とローリング・ストーンズ

テレビを見ていると、ドラマやドキュメンタリー、紀行番組などで BGM が使われます。トーク番組やバラエティでも、挿入される VTR には BGM付きがよくあります。そのような BGM は画面やシーンの "雰囲気づくり" のためで、視聴者としては何となく音楽を感じるだけで "聴き流して" います。しかし時々、良く知っている曲、しかも長いあいだ聴いていない曲が流れてきたりすると "懐なつかしい!" とか "久しぶり!" という感じになって、BGMの方に神経が行ってしまうことがあります。 一つの例を、No.185「中島みゆきの詩(10)ホームにて」に書きました。テレビ朝日の「怒り新党」という当時の番組のある回で(2016年8月3日)、中島みゆき「ホームにて」(1977)が BGM として流されたからです。この曲は JR東日本の CM にも使われたし、BGM にするのはありうるのですが、番組放送から40年近くも前の曲です。この曲が好きな人は "突如として" 懐かしさがこみ上げてくる感じになったと思います。そういった BGM の最近の例を書きます。NHKの番組「美の壷」のことです。 美の壷「煙の魔法 燻製」 NHK BSプレミアムで 2021年9月10日(19:30~20:00)に、 美の壷 File550「煙の魔法 燻製」 が放映されました。久しぶりにこの番組を見ましたが、出演は草刈正雄さん(案内人)と木村多江さん(ナレーション)で、番組の構成方法や進行は…

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