No.312 - ダブル・レインボー

先日、新聞を読んでいたらダブル・レインボー(二重の虹。二重虹)のことが出ていました。そして、以前にこのブログで引用した絵画を思い出しました。今回はそのことを書きます。 二重の虹 まず、ダブル・レインボーについて書かれた朝日新聞の記事を引用します。以降の引用において下線は原文にはありません。 5分間の奇跡 ダブルレインボー朝日新聞 2021年4月8日(木)夕刊 奈良の里山にかかった二重の虹。第37回「日本の自然」写真コンテスト(全日本写真連盟など主催)の入選作=山本一朗さん撮影 虹が二重にかかる「ダブルレインボー」。豊富な水滴や強い太陽光などの条件がそろわないとめったにお目にかかれないため、幸運の象徴とも言われる珍しい現象だ。 大阪府の全日本写真連盟会員、山本一朗さん(75)は、祭りの撮影に訪れた奈良県天理市の里山で、雨宿り中に虹に気づいた。田んぼに駆け出ると、紅白のコブシの頭上に、二重の円弧が橋のようにかかっていた。その時間5分。「一生に一回あるかないか」。びしょぬれになってシャッターを切った。 内側の通常の虹(主虹)が、雨粒の中で太陽光が1回反射して七色の光の帯を見せるのに対し、外側にみえる虹(副虹)は2回反射する。色の並びが内側は赤、外側は紫と、主虹と反対であり、色も薄い。これは反射が1回多いせい。理論上、三重、四重の虹も存在するが、光量が弱く、見ることはできないそうだ。(石倉徹也) ダブル・レインボーは私も2~3度、見たこと…

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No.311 - 高校数学で理解するRSA暗号の数理(2)

(前回から続く) 4. RSA暗号の証明  4.1 RSA暗号RSA暗号の公開鍵・秘密鍵の作成方法と暗号化・復号化の計算式を定理として記述すると次の通りです。\(p\) と \(q\) を相異なる素数とし、\(n=pq\) とする。\(e\) を \(m=(p-1)(q-1)\) と素な数、\(d\) を、\(de\equiv1\:(\mathrm{mod}\:m)\) を満たす数とする。この前提で、暗号化:\(P^e\equiv C\:(\mathrm{mod}\:n)\) ならば復号化:\(C^d\equiv P\:(\mathrm{mod}\:n)\) である。( \(P\):平文。\(C\):暗号文 ) RSA暗号において、暗号化・復号化に必要なのは公開鍵の \((e,\:n)\) と 秘密鍵の \(d\) であり、それらを生成するのに使った \(p\) と \(q\) は不要です。というより、\(p\) と \(q\) ないしは \((p-1)(q-1)\) が漏れると暗号が破られてしまうので、これらの数は鍵を生成した後は破棄(情報を安全に抹消)する必要があります。 以下に、上の「復号化の式」が成り立つことを証明します。まず合同式の累乗 1.2 を使って「暗号化の式」の両辺を \(d\) 乗すると、 \(C^d\equiv P^{de}\:(\mathrm{mod}\:pq)\) \(\cdots\:(1)\) となります。ここで、\(d…

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No.310 - 高校数学で理解するRSA暗号の数理(1)

No.235「三角関数を学ぶ理由」では、私たちが学校で勉強を学ぶ目的の一つが「論理的に考える力を養う」こととし、その典型例として数学をとりあげました。数学は「論理のみで成り立っている」からです。そのことを改めて示すために \(\mathrm{sin}\:\theta\) の微分が \(\mathrm{cos}\:\theta\) になることを、三角関数のそもそもの定義に立ち返って証明しました。 今回はその継続・発展で、別の数学の問題を取り上げます。現代社会で広く使われている公開鍵暗号(その中の RSA暗号)です。これを取り上げる理由 は、 ◆  2000年にわたる数学(数論 = 整数論)の基礎の上に作られた暗号である。 ◆  インターネットの重要技術の一つであり、現代社会のインフラとなっている。 ◆  高校生程度の前提知識があれば、論理的思考を積み重ねることで十分に理解できる(= タイトルの「高校数学で理解する」の意味)。 の3点です。以下の文章は元々別の目的のために作ったものですが、ここに掲載することにします。  公開鍵暗号  公開鍵暗号とは、 ◆  暗号化の手順と、そこで使用する暗号化のための "鍵" が公開されている(その鍵が "公開鍵")。 ◆  暗号文を解読するための手順も公開されているが、それに使う "鍵" は秘匿されている(その鍵が "秘密鍵")。 というタイプの…

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