No.294 - 鳥が恐竜の子孫という直感

No.210「鳥は "奇妙な恐竜"」で、鳥が恐竜の子孫であることが定説となった経緯を日経サイエンスの論文から紹介しました。特に、1990年代以降に発見された「羽毛恐竜」の化石が決定打になったという話でした。 その「鳥は恐竜の子孫」に関係した話を、歌人で情報科学者(東京大学教授)の坂井修一氏が日本経済新聞に連載中のコラム、"うたごころは科学する" に書かれていました。坂井氏の奥様のことなのですが、興味深い内容だったのでそのコラムを引用して感想を書きたいと思います。 見ればわかる  "うたごころは科学する" 見れば分かる 坂井修一 私の妻は文学部出身。科学や技術にはそれほど詳しくない。オーディオ装置のリモコンを使いこなせないし、パソコンやスマホでSNSするのも上手とは言えない。 でも、不思議な直感力をもっている。 40年前に彼女とつきあい始めたころ、井の頭公園で泳いでいる鴨かもを見て、「鳥は恐竜の直系の子孫である」と強く主張したのだ。 これは今では定説となっているが、当時はそうでなかった。少なくとも、私は知らなかった。彼女も、むろん、学説として知っていたわけではない。でも、彼女は直感していた。犬がオオカミの親戚であるように、猫がライオンの親戚であるように、鳥は恐竜の進化形なのだと。 駝鳥だちょうや海鵜うみうを見ると、まあそれもありかなと思うが、彼女は公園の鴨や鳩はとを見てもそう感じるのだそうだ。そのときは文学部らしい感性だなと思ったが、…

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No.293 - "自由で機会均等" が格差を生む

今回は、日経サイエンス 2020年9月号に掲載された論文「数理が語る格差拡大のメカニズム」の内容を紹介するのが目的です。この論文は、自由主義経済においては公平でフェアな取引きを繰り返すと必然的に格差が拡大することを数理モデルで論証したものです。 なぜこの論文を取り上げるかというと、No.165「データの見えざる手(1)」で紹介した "玉の移動シミュレーション" と本質的に同じことを言っているからです。そこでまず、No.165のシミュレーションを復習してから本題に入りたいと思います。 コインの移動シミュレーション No.165は、矢野和男・著「データのみえざる手」(草思社 2014)の内容の一部を紹介したものでした。この中に出てきたシミュレーションをここで再掲します。ただし本質をより明確にするため、シミュレーションの初期設定を変え、またシミュレーションの実行は繰り返し回数を変えて3種類にします。No.165では「玉」と書きましたが、本題につなげるために「コイン」とします(同じことです)。 まず 30 × 30 = 900 のセルを用意し、これらのセルに初期状態としてコインをそれぞれ 80 割り当てます。従って割り当てるコインの総数は、  80 × 900 = 72,000 セルの色分け です。900 とか 80 という数字は、No.165「データの見えざる手(1)」に合わせるためにそうしただけで、他意はありません。今回は別の数でもかまわないのですが、シ…

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