No.292 - ゴッホの生物の絵
No.93「生物が主題の絵」の続きです。No.93 でとりあげたのは、西洋絵画における "生物画" でした。ここでの "生物画" の定義は次の通りです。
生物画:
人間社会やその周辺に日常的に存在する動物・植物・生物の「生きている姿」を主題に描く絵。空想(龍、鳳凰)や伝聞(江戸時代以前の日本画の象・ライオン・獅子などの例)で描くのではない絵。生物だけ、ないしは生物を主役に描いたもので、風俗や風景が描かれていたとしてもそれは脇役である絵。
西洋絵画の "静物画" は、フランス語で "nature morte"(死んだ自然)、英語で "still life"(動かない生命)と言うように、「死んだ」ないしは「動かない」状態を描いたものです。そうではなく「生物が生きている環境で生きている姿を描く」のが上の "生物画" の定義のポイントです。
この定義の "生物画" は日本画では大ジャンルを作っていますが、西洋の絵では少ない。もちろん、記録が主たる目的の「植物画」や「博物画」は除いて考えます。その少ない中でも生物を中心画題にした絵はあって、特に著名画家が描いた "生物画" を並べてみると何か見えてくるものがあるのでは、との考えで書いたのが、No.93「生物が主題の絵」でした。
その No.93 でゴッホの『アイリス』を引用しましたが、No.93 でも書いたようにゴッホは多数の生物を主題にした絵を描いています。つまり『アイリス』だけでは画家の本質を伝えられないと思うので、今回はゴッホ…