No.288 - ナイトホークス
No.203「ローマ人の "究極の娯楽"」で、フランスの画家・ジェロームが古代ローマの剣闘士を描いた『差し下おろされた親指』(1904)がハリウッド映画『グラディエーター』(2000)の誕生に一役買ったという話を書きました。そのあたりを復習すると次のようです。
20世紀末、ハリウッド映画で "古代ローマもの" を復活させようと熱意をもった映画人が集まり、おおまかな脚本を書き上げました。紀元180年代末の皇帝コンモドスを悪役に、架空の将軍をヒーローにした物語です。将軍は嫉妬深いコンモドス帝の罠にはまり、奴隷の身分に落とされ、剣闘士(グラディエーター)にされてしまう。そして彼は剣闘士として人気を博し、ついにはローマのコロセウムで、しかもコンモドス帝の面前で命を賭けた戦いをすることになる。果たして結末は ・・・・・・。
制作サイドは監督にリドリー・スコットを望んだ。『エイリアン』『ブレードランナー』『ブラック・レイン』『白い嵐』など、芸術性とエンターテインメント性を合体させたヒット作を連打していたスコットなら、古代ローマものを再創造してくれるに違いない、と。
だがスコットは最初はあまり乗り気ではなかったらしい。そこで制作総指揮者は彼に『差し下された親指』を見せた。フランスのジェロームが百年以上も昔に発表した歴史画である。後にスコット曰く、「ローマ帝国の栄光と邪悪じゃあくを物語るこの絵を目にした途端、わたしはこの時代の虜とりこになった」(映画パンフレットより)。
こうして完…