No.268 - 青森は日本一の「短命県」

No.247「幸福な都道府県の第1位は福井県」で、都道府県の "幸福度" を数値化する指標の一つである平均寿命を取り上げました。この「都道府県別の平均寿命」は青森県が最下位です。そのことを指して、 青森県民が塩気の利いた食品(漬け物など)を好むからだという説を聞いたことがありますが、青森県当局としてはその原因を追求し対策をとるべきでしょう。 と書きました。私は知らなかったのですが、実は「青森は日本一の短命県」という "汚名" を返上すべく、2005年から大がかりなプロジェクトが進んでいます。そのことは最近の新聞で初めて知りました。その認識不足の反省も込めて、今回は進行中のプロジェクトの話を書きます。まず、No.247 で取り上げた「都道府県別の平均寿命」の復習です。 都道府県別の平均寿命 厚生労働省は5年に1回、「生命表」を公表しています。最新は2015年のデータで、ここでは男女別の平均余命が全国および都道府県別に集計されています。ゼロ歳の平均余命が、いわゆる「平均寿命」です。 No.247「幸福な都道府県の第1位は福井県」は、「2018年版 都道府県幸福度ランキング」(日本総合研究所編)の内容を紹介したものでしたが、ここで指標の一つとして使われた平均寿命は、厚生労働省の「道府県別平均寿命データ(2015年)」の男女の平均値でした。つまり男と女の平均寿命を単純平均したもの(小数点以下1桁)です。 今回は、厚生労働省の原データ(小数点以下2桁)から再計算した結果を…

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No.267 - ウナギの商用・完全養殖

No.107「天然・鮮魚・国産への信仰」の続きです。No.107 で魚介類の「天然」と「養殖」の話の中で、ウナギの養殖に使うシラスウナギ(=天然のウナギの稚魚)の漁獲量が激減している(従って価格が高騰している)ことを書きました。 そのウナギですが、最近の日経サイエンス(2019年8月号)に完全養殖の商用化についての現状がレポートされていました。そこで、これを機会に魚介類の「天然・養殖」についてもう一度振り返り、日経サイエンスの記事からウナギの商用・完全養殖の状況を紹介したいと思います。 「天然信仰」からの脱却 No.107で書いたように、世間一般には「素朴な天然信仰」があり、まずそこから脱却する必要があるでしょう。そもそも魚介類について「天然もの」の方が「養殖もの」よりおいしいとか、品質が良いと決めつけるのがおかしいわけです。一つの例として No.107 でミシュランの3つ星店「すきやばし次郎」の小野二郎氏(現代の名工)の発言を紹介しました。次のような要旨でした。 【要旨】 鮨ネタに関しては、一般的に天然のほうが旨い。しかし、シマアジに関しては養殖ものの方が旨いという客もいる(好みによる)。またクルマエビは、養殖の方が香りと濃厚さで勝っている。 小野二郎 (文藝春秋 2013.8) 「すきやばし次郎」は、一部の例外や入手困難なネタを除いて、天然ものを使うのが基本で、それは立派な見識です。しかし上の要旨にあるように、シマアジに関しては天然と養殖で客の好…

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