No.237 - フランスのAI立国宣言

No.233/234/235 で、国立情報学研究所の新井紀子教授の著書「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済報社 2018.2)の内容を紹介し、感想を書きました。その新井教授ですが、最近の新聞のコラムでフランスの "AI立国宣言" について書いていました。AIと国家戦略の関係を考える上での興味深い内容だったので、それを紹介しようと思います。コラムの見出しは、  仏のAI立国宣言 何のための人工知能か 日本も示せ   (朝日新聞 2018年4月18日) です。 パリでのシンポジウム 2018年3月29日、フランス政府はパリで世界の人工知能(AI)分野の有識者を集めて意見交換会とシンポジウムを開催しました。新井教授もこの会に招かれました。 日本ではほとんど報じられていないが、人工知能(AI)分野で、地政学的な変化が起きようといている。フランスの動向だ。マクロン大統領は3月末、世界中からAI分野の有識者を招き意見交換会とシンポジウムを開催。フランスを「AI立国」とすると宣言した。2022年までに15億ユーロをAI分野に投資し、規制緩和を進める。 招待された中には、フェイスブックのAI研究を統括するヤン・ルカンやアルファ碁の開発者として名高いディープマインド(DM)社のデミス・ハサビスらが含まれた。DMは今回パリに研究拠点を置くことを決めた。 新井紀子 朝日新聞(2018.4.18) "メディア私評" 欄 フ…

続きを読む

No.236 - 村上春樹のシューベルト論

前回の No.235「三角関数を学ぶ理由」で、村上春樹さんが「文章のリズムの大切さ」を述べた発言を紹介しました。これは「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(新潮社 2011。以下「本書」)からの引用でしたが、それ以前の記事でも本書の内容を紹介したことがありました。 ◆ No.135 - 音楽の意外な効用(2)村上春樹◆ No.136 - グスタフ・マーラーの音楽(1)◆ No.137 - グスタフ・マーラーの音楽(2) の3つです。本書は、指揮者・小澤征爾さんとの3回にわたる対談を村上春樹さんがまとめたものですが、その「あとがき」で小澤さんが次のように書いていたのが大変に印象的でした。 音楽好きの友人はたくさん居るけれど、春樹さんはまあ云ってみれば、正気の範囲をはるかに超えている。クラシックもジャズもだ。 小澤征爾 「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 (新潮社 2011)の「あとがき」より 村上春樹「意味がなければスイングはない」 (文春文庫 2008) その "正気の範囲をはるかに超えた音楽好き" である村上春樹さんが書いた音楽エッセイ集(評論集)があります。「意味がなければスイングはない」(文藝春秋 2005。文春文庫 2008)です。内容はジャズとクラシック音楽に関するものが多いのですが、ウディー・ガスリー、ブライアン・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)、ブルース・スプリングスティーン、スガシカオもあるというように、フ…

続きを読む