No.230 - 消えたベラスケス(1)
今まで17世紀スペインの宮廷画家、"王の画家にして画家の王" と呼ばれるベラスケスについて5回書きました。
◆No. 19 - ベラスケスの「怖い絵」
◆No. 36 - ベラスケスへのオマージュ
◆No. 45 - ベラスケスの十字の謎
◆No. 63 - ベラスケスの衝撃:王女と「こびと」
◆No.133 - ベラスケスの鹿と庭園
の5つです。今回はその続きで、2018年に発売されたローラ・カミング著『消えたベラスケス』(五十嵐加奈子訳。柏書房 2018)を紹介します。著者は英国の美術評論家で、もとBBCの美術担当プロデューサーです。
ローラ・カミング
「消えたベラスケス」
五十嵐加奈子訳(柏書房 2018)
消えたベラスケス
この本については中野京子さんが書評を書いていました。まずそれを引用します。日本経済新聞の読書欄からで、下線は原文にはありません。
芸術が魂に与える力を熱く
「消えたベラスケス」
ローラ・カミング 著
著者曰いわく、本書は巨匠の中の巨匠ベラスケスを称たたえる書である。
その言葉どおり熱い本だ。芸術作品というものは各時代の賛美者たちが熱く語り続けることで、次代へ繋つながれてゆく。ベラスケスはスペイン宮廷の奥に隠されていた時代にはゴヤが、公共美術館に展示されてからはマネが、その超絶技巧と魅力を喧…