No.221 - なぜ痩せられないのか

No.178「野菜は毒だから体によい」で、なぜ野菜を食べると体に良いのかを書きました。野菜が体に良いのは各種のビタミンや繊維質、活性酸素を除去する抗酸化物質などが摂取できるからだと、我々は教えられます。それは全くその通りなのですが、No.178に書いたのは野菜には実は微量の毒素があり、それが人間の体の防衛反応を活性化させて健康につながるという話でした。微量毒素は "苦い" と感じるものが多く、ここから言えることは、苦みを消すような品種改良は "改良" ではなくて "改悪" だということです。 この話でも分かることは、人間の体の仕組みにはさまざまな側面があり、それを理解することが健康な生活に役立つということです。No.119-120「不在という伝染病」で書いたことですが「微生物に常に接する環境が人間の免疫機能の正常な働きを維持する」というのもその一例でしょう。 今回はそういった別の例を紹介します。肥満の原因、ないしは "なぜ痩やせられないのか" というテーマについての研究成果です。日本ではBMIが25以上で肥満とされていますが、肥満は糖尿病、高血圧、心臓病などの、いわゆる生活習慣病を誘発します。従ってダイエット方法やダイエット食に関する情報が世の中に溢れているし、ダイエット・ビジネスが一つの産業になっています。 なぜ肥満になるのか。その第1の原因は消費エネルギーが摂取エネルギーより小さいからです。その差がグリコーゲンとして肝臓に蓄えられ、また体の各所の細胞や脂肪細胞に蓄えられる。簡…

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No.220 - メト・ライブの「ノルマ」

No.8「リスト:ノルマの回想」でとりあげたリストの『ノルマの回想』(1836)は、ベッリーニ(1801-1835)のオペラ『ノルマ』に出てくる数個の旋律をもとにリストが自由に構成した曲でした。 実は今まで『ノルマ』を劇場・オペラハウスで見たことがなく、No.8 を書いた時も一度見たいものだと思ったのですが、その機会がありませんでした。ところが先日、メト・ライブビューイングで『ノルマ』が上映されることになったので、さっそく見てきました。No.8「リスト:ノルマの回想」からすると7年越しになります。以下はその感想です。 ベッリーニのオペラ『ノルマ』(1831初演) ベッリーニのオペラ『ノルマ』のあらすじは、No.8「リスト:ノルマの回想」に書いたので、ここでは省略します。ドラマの時代背景とポイントを補足しておきますと、紀元前50年頃のガリア(現在のフランス)が舞台です。 古代の共和制ローマは紀元前58年~51年、カエサルの指揮のもとにガリアに軍隊を進め、いわゆる「ガリア戦争」を戦いました。この結果、ガリア全土がローマの属州となりました。この過程を記述したカエサルの「ガリア戦記」は世界文学史上の傑作です。その直後のガリアがこのオペラの時代です。 ガリアの住民はケルト民族で、ドルイド教を信仰しています。オペラではドルイド教の巫女みこの長がノルマ、巫女でノルマの部下にあたるのがアダルジーザ、ローマのガリア総督がポリオーネで、この3人のいわゆる "三角関係" でドラマが進行して…

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