No.219 - リスト:詩的で宗教的な調べ
今までフランツ・リスト(1811-1886)の曲を3つとりあげました。
◆No. 8 - リスト:ノルマの回想
◆No. 44 - リスト:ユグノー教徒の回想
◆No.209 - リスト:ピアノソナタ ロ短調
の3作品です。No.8 と No.44 は、それぞれベッリーニとマイヤーベーアのオペラの旋律をもとに自由に構成した曲で、どちらかというとリストの作品ではマイナーな(?)ものです。一方、No.209 は "傑作" との評価が高い曲ですが、今回は別の傑作を取り上げます。『詩的で宗教的な調べ』です。他にも有名な作品はありますが、なぜこの曲かと言うと私が持っているこの曲の CD(イタリアのピアニスト、アンドレア・ボナッタ演奏)について書きたいからです。それは後にすることにして、まず『詩的で宗教的な調べ』について振り返ってみます。
詩的で宗教的な調べ
『詩的で宗教的な調べ』はリストが19世紀フランスの代表的詩人、アルフォンス・ド・ラマルティーヌ(1790-1869)の同名の詩集(1830)に触発されて作曲した、全10曲からなるピアノ曲集です。1845年(34歳。初稿)から1853年(42歳。最終稿)にかけて作曲されましたが、曲集の中の「死者の追憶」の原曲は1834年(23歳)の作品であり、足かけ20年近くの歳月で完成したものです。
この曲集は、ドイツ系ロシア貴族のカロリーヌ・ザイン = ヴィトゲンシュ…