No.204 - プロキシマ b の発見とスターショット計画

今まで科学雑誌「日経サイエンス」の記事に関する話題を何件か書きました。振り返ってリストすると以下の通りです  No. 50絶対方位言語と里山  No. 70自己と非自己の科学(2)  No.102遺伝子組み換え作物のインパクト(1)  No.105鳥と人間の共生  No.16910代の脳  No.170赤ちゃんはRとLを聞き分ける  No.177自己と非自己の科学:苦味受容体  No.178野菜は毒だから体によい  No.184脳の中のGPS 日経サイエンス 2017.5 なぜ科学に興味があるかというと、科学的な知見が人間社会の理解に大いに役立つことがあると思うからです。その観点でリストをみると、ほとんどが生命科学の記事であることに気づきます(No.50、No.105以外の全部)。また No.50(絶対方位言語)は心理学の話(人間の認知のしくみと言葉の関係)、No.105は人類学の話なので、これらのすべては「生命・人間科学」と一括できます。「生命・人間科学」の知見が人間社会の理解に役立つのは、ある意味では当然でしょう。 しかし「生命・人間科学」とは全く違う分野のサイエンスが社会や人間の理解につながることもあると思うのです。その意味で、今回は全く違った分野である天文学・宇宙物理学の話を書きたいと思います。最近の「日経サイエンス 2017年5月号」に掲載された記事にもとづきます…

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No.203 - ローマ人の "究極の娯楽"

今まで古代ローマに関する記事をいくつか書きました。リストすると次の通りです。  No. 24ローマ人の物語(1)寛容と非寛容  No. 25ローマ人の物語(2)宗教の破壊  No. 26ローマ人の物語(3)宗教と古代ローマ  No. 27ローマ人の物語(4)帝国の末路  No.112ローマ人のコンクリート(1)技術  No.113ローマ人のコンクリート(2)光と影  No.123ローマ帝国の盛衰とインフラ  No.162奴隷のしつけ方 発端は、No.24-No.27 で塩野七生氏の大作『ローマ人の物語』の感想を書いたことでした。ローマ人の宗教だけに絞った感想です。また、No.112、113、123 はインフラストラクチャ(のうちの建造物)の話で、その建設に活躍した古代ローマのコンクリートの技術のことも書きました。No.162 は奴隷制度の実態です。 今回はこの継続で、古代ローマの円形闘技場で繰り広げられた闘技会のことを書きたいと思います。「宗教 = ローマ固有の多神教・キリスト教」や「巨大建造物・コンクリート技術」は、古代ローマそのままではないにしろ現代にも相当物があり、私たちが想像しやすいものです。奴隷制度は現代では(原則的に)ありませんが、奴隷的労働はあるので、それも想像しやすい。 しかし大観衆が見守る円形闘技場での "剣闘士の殺し合い" は現代人の想像を越えていて、そこが非常…

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No.202 - ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館

個人コレクションにもとづく美術館について、今まで6回書きました。  No. 95バーンズ・コレクション米:フィラデルフィア  No.155コートールド・コレクション英:ロンドン  No.157ノートン・サイモン美術館米:カリフォルニア  No.158クレラー・ミュラー美術館オランダ:オッテルロー  No.167ティッセン・ボルネミッサ美術館スペイン:マドリード  No.192グルベンキアン美術館ポルトガル:リスボン の6つです。いずれも19・20世紀の実業家の個人コレクションが美術館設立の発端となっています。今回はその続きで、オランダのロッテルダムにある「ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館」をとりあげます。 美術館のロケーション オランダの美術館で No.158 で書いたクレラー・ミュラー美術館は、ゴッホの作品が好きな人にとっては是非とも訪れたい美術館ですが、この美術館はオッテルローという郊外の町の国立公園の中にあります。アムステルダムから公共交通機関を使うとすると、列車(直通、または乗り継ぎ)とバス2系統の乗り継ぎで行く必要があります。 それに対してボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館はロッテルダムという大都市の中心部にあり、アムステルダムからは列車1本で行けます。また途中のデン・ハーグにはマウリッツハイス美術館があるので、この2美術館をアムステルダムからの日帰りで訪問することも十分に可能で…

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