No.175 - 半沢直樹は機械化できる

No.173「インフルエンザの流行はGoogleが予測する」と No.174「ディープマインド」は、いずれもAI(Artificial Intelligence。人工知能)の研究、ないしはAI技術によるビッグデータ解析の話でした。その継続で、AIについての話題です。 AI(人工知能)が広まってくると「今まで人間がやっていた仕事、人間しかできないと思われていた仕事で、AIに置き換えられるものが出てくるだろう」と予測されています。これについて、国立情報学研究所の新井紀子教授が新聞にユニークなコラムを書いていたので、それをまず紹介したいと思います。新井教授は、例の「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトのディレクターです。 金融におけるITの活用 新井教授は、金融サービスにおける "フィンテック" が日本を含む世界で熱を帯びていることから話を始めます。 フィンテックはファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を合成した造語で、ITを駆使して金融サービスを効率化したり新しい金融サービスや商品を生み出したりすることを意味する。 金融とITの組み合わせというと、大手銀行がコールセンターにかかってくる問い合わせの電話の応対に人工知能(AI)を導入するという話題が記憶に新しい。AIの発達で銀行や証券会社の窓口係がロボットに置き換わると予測する人工知能学者も少なくない 新井紀子 コラム「Smart Times」 (日経産業新聞 2016.3.3) 2014年末、三井住友…

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No.174 - ディープマインド

最近の記事で、AI(Artificial Intelligence。人工知能)について3回書きました。 No.159AIBOは最後のモルモットか No.166データの見えざる手(2) No.173インフルエンザの流行はGoogleが予測する の3つです。No.159 の "AIBO" は AI技術を利用したソニーの犬型ロボットで、1999年に発売が開始され、2006年に販売終了しました。さすがソニーと思える先進的な製品です。また、No.166「データの見えざる手(2)」で紹介したのは「ホームセンターの業績向上策」をAI技術を利用して見い出したという事例でした。さらにNo.173は、グーグルが人々の検索ワードを蓄積したビッグデータをもとに、AI技術を応用してインフルエンザの流行予測を行った例でした。 そのAI関連の継続で、今回はグーグルが2014年に買収した英国の会社、ディープマインド社について書きたいと思います。この会社がつくった「アルファ碁」というコンピュータ・プログラムは、囲碁の世界トップクラスの棋士と対戦して4勝1敗の成績をあげ、世界中で大変な話題になりました。 「アルファ碁」とイ・セドル九段の5番勝負 2016年3月、韓国のイ・セドル(李世乭)九段とディープマインド社の「アルファ碁」の5番勝負がソウル市内で行われ、「アルファ碁」の4勝1敗となりました。イ・セドル九段は世界のトップクラスの棋士であり(世界No.1とも、No.2とも言われる)、囲碁…

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No.173 - インフルエンザの流行はGoogleが予測する

No.166「データの見えざる手(2)」において、『データの見えざる手』という本の著者である矢野和男氏が行った「ホームセンターの業績向上策」の実験を紹介しました。今回はこれと関係のある話を書きます。ホームセンターの業績向上策がどういうものだったか、復習すると以下のようになります。 ◆実験の目的は、あるホームセンター顧客単価(顧客一人当たりの購買金額)を向上させることである。 ◆まず、従業員と客にセンサー内蔵のカードを身につけてもらい、店内における行動と体の動きの全データ(以下、ビッグデータ)を詳細に記録した(2週間分)。 ◆次に、人工知能(AI)の技術を利用し、顧客単価に影響がありうるデータの組み合わせ、約6000項目を自動抽出した。 ◆それらの項目の実測データとレジでの購買データを付き合わせ、相関関係をチェックした。 ◆その結果、「従業員の滞在時間が長いと顧客単価があがる特定の場所=ホットスポット」の存在が明らかになった。 ◆従業員がホットスポットに意図的に長く滞在するようにして実測したところ、実際に顧客単価が上昇した。 という経緯でした。この話のポイントは2つあります。 ①ビッグデータを網羅的に全部収集した。 ②目的(顧客単価の向上)と相関関係にありそうな項目を、AI技術を使って自動抽出した。 の2点です。①についていうと、従来行われていたサンプリング(サンプル従業員、サンプル顧客、サンプル時間帯)ではないところに意義があります。とに…

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