No.167 - ティッセン・ボルネミッサ美術館

個人コレクションを元にした美術館について、今まで4回書きました。 No. 95バーンズ・コレクション No.155コートールド・コレクション No.157ノートン・サイモン美術館 No.158クレラー・ミュラー美術館 の4つで、いずれもコレクターの名前がついています。今回はその "個人コレクション・シリーズ" の続きで、スペインのマドリードにあるティッセン・ボルネミッサ美術館です。 マドリードの美術館 マドリードには3つの有名美術館があります。 ・プラド美術館 ・ソフィア王妃芸術センター ・ティッセン・ボルネミッサ美術館 ですが、この3つの美術館はそれぞれの所蔵作品に特色があります。プラド美術館は古典絵画(18世紀かそれ以前)とスペインの近代絵画(19世紀)が充実していてます。ソフィア王妃芸術センターは、20世紀のモダンアートが中心です(『ゲルニカ』がある)。 それに比較してティッセン・ボルネミッサ美術館は、古典からモダンアートまで幅広い作品が揃っています。特に、他の2つにはない19世紀の(スペイン以外の)印象派・後期印象派の絵、および18世紀以前のオランダ絵画が充実している。その意味で、3館をあわせると西洋絵画の幅広い美術史がカバーできます。 ティッセン・ボルネミッサ美術館 (白い建物は増築された部分) ティッセン・ボルネミッサ美術館の設立経緯 ティッセン・ボルネミッサという名称は、スペイン語にはそぐわない感じの、ちょっと変…

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No.166 - データの見えざる手(2)

(前回より続く) 前回より引き続いて『データの見えざる手』(矢野和男・著。草思社。2014)の紹介と感想です。『データの見えざる手』は次のような章構成になっています。 第1章時間は自由に使えるか 第2章ハピネスを測る 第3章「人間行動」の方程式を求めて 第4章運とまじめに向き合う 第5章経済を動かす新しい「見えざる手」 第6章社会と人生の科学がもたらすもの 矢野和男 「データのみえざる手」 (草思社。2014) 前回は第1章の内容の紹介と感想でした。第2章は "ハピネス"(幸福だと感じること)が人間の身体の動きにどうあらわれるか、また従業員の "ハピネス" と企業の業績の関係が説明されています。 第3章は、人間がある行動をしてから次に同じ行動をするまでの経過時間(T)の分析です。ここでは、Tの逆数に比例して行動の確率が低下していくことが述べられています("去るものは日々に疎うとし")。 第4章は、「運がよい」ことを「人との出会い(直接的・間接的)の回数が多いこと」ととらえ、"運がよい組織" のありかたが検討されています。第5章は以下で紹介します。 第6章は、著者が主催した瀬戸内海の直島での「討論会」(人と社会についての大量データの取得・分析にもとづく、科学と社会の新しい関係)の結果が説明されています。 以下では第5章、"経済を動かす新しい「見えざる手」" で書かれていることを紹介します。前回の第1章と同じく人の行動に関するビッグデータの分析の話…

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