No.158 - クレラー・ミュラー美術館

前回もそうでしたが、"個人コレクション"を元にした美術館について、今まで3回書きました。 No.95バーンズ・コレクション No.155コートールド・コレクション No.157ノートン・サイモン美術館 の3つです。その "個人コレクション・シリーズ" の継続で、今回はオランダのオッテルローにある「クレラー・ミュラー美術館」について書きます。 ロケーション クレラー・ミュラー美術館のロケーションは、以前の3つの美術館とは "真逆まぎゃく" と言っていいてしょう。その "特徴" は ◆アムステルダムから「行きにくい」所にある ◆国立公園の中にある の二つです。 クレラー・ミュラー美術館は、オランダの「デ・ホーフェ・フェルウェ国立公園」の中にあるのですが、アムステルダムから行くには、列車でエーデ・ワーゲニンゲン駅まで行き、そこからバスでオッテルローに向かい、さらにバスを乗り継いで国立公園の入り口まで行く必要があります。 (Google Map) 冒頭に掲げた3つの美術館が都市の中心部にごく近く、メトロかバス1本(ないしは近距離タクシー)で行けるのとは大違いです。オランダの著名美術館と比較しても、アムステルダム国立美術館とゴッホ美術館はトラムの発達した市内にあるし、マウリッツハイス美術館は首都のデン・ハーグの駅から徒歩圏内、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館も大都会のロッテルダムの駅から歩いて行けます。フランス・ハルス美術館はハーレム(アムス…

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No.157 - ノートン・サイモン美術館

今までの記事で、個人コレクションをもとにした美術館について書きました。 No.95バーンズ・コレクション No.155コートールド・コレクション の2つです。今回はその "シリーズ" の続きとして、アメリカのカリフォルニアにあるノートン・サイモン美術館のことを書きたいと思います。 電車で行ける ノートン・サイモン美術館はロサンゼルス近郊のパサデナにありますが、ポイントの一つはロサンゼルスのダウンタウンから電車で行けることです。 ロサンゼルスの観光スポットと言うと、クルマがないと行けないところ、ないしは大層不便なところ(バスの乗り継ぎなど)もあるのですが(ディズニーランド、ナッツベリーファームなど)、ノートン・サイモン美術館に関しては2003年にメトロの「ゴールドライン」が開通し、電車で行けるようになりました。ダウンタウンのユニオン駅から乗って「メモリアル・パーク」という駅で下車します。 パサデナ・オールドタウン メモリアル・パーク駅からノートン・サイモン美術館までは約1.2~3kmの距離ですが、是非、歩いていきましょう。というのも途中に "パサデナ・オールドタウン地区" があるからです。 パサデナは高級住宅街ですが、その中のオールドタウン地区は、昔からのレンガ造りの建物を生かした街づくりがされています。ここには各種のショップやアート・スポット、レストラン、カフェが立ち並び、大変おしゃれな感じのエリアです。そもそもパサデナ・オールドタウンがロサンゼル…

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No.156 - 世界で2番目に有名な絵

前回の No.155「コートールド・コレクション」で、日本女子大学の及川教授の、  サント・ヴィクトワール山は、セザンヌにとっての富士山 という主旨の発言を紹介しました。これはあるIT企業(JBCC)の情報誌に掲載された対談の一部です。その対談で及川教授は別の発言をしていました。大変興味をそそられたので、その部分を紹介したいと思います(下線は原文にありません)。 石黒 和義:(JBCCホールディングス社長:当時) 先週まで、スペインにおられたとうかがいました。 及川 茂:(日本女子大学教授:当時) はい。サラマンカ大学とサラゴサ大学で講義を行ってきました。 石黒: サラマンカ大学はスペインで最も歴史のある名門大学ですね。 及川: そうです。イタリアのボローニャ大学についで古い大学の一つです。そのサラマンカ大学では、2週間の集中講義を行いました。美術史講座で「ジャポニズム」がテーマでしたので、関連深い浮世絵の全体像を知りたいと、私に白羽の矢が立ったようです。 ところで、世界で一番有名な絵はダ・ヴィンチの「モナ・リザ」といわれますが、二番目に有名な絵は何だと思いますか ? 石黒: なんだろうな。ゴッホの「ひまわり」あたりはどうですか。 及川: 近いですよ(笑)。葛飾北斎の大波の絵と言われています。サラマンカでも講義に出た全員が知っていました。ところが、この絵をきちんと説明できる日本人はほとんどいない。まず正確な題名が出てこ…

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