No.155 - コートールド・コレクション

前回の No.154「ドラクロワが描いたパガニーニ」で紹介した絵画『ヴァイオリンを奏でるパガニーニ』があるのは、アメリカのワシントン D.C.にあるフィリップス・コレクションでした。また以前に、No.95 でバーンズ・コレクション(米・フィラデルフィア)のことを書きましたが、これらはいずれも個人のコレクションを美術館として公開したものです。 個人コレクションとしては、日本でも大原美術館(大原孫三郎。倉敷市。1930 ~ )、ブリヂストン美術館(石橋正二郎。東京。1952 ~ )、足立美術館(足立全康。島根県安来市。1970 ~ )などが有名だし、海外でもノートン・サイモン(米・カリフォルニア)、クラーク(米・マサチューセッツ)、フリック(米・ニューヨーク)、クレラー・ミュラー(オランダ)、オスカー・ラインハルト(スイス)など、コレクターの名前を冠した美術館が有名です。 こういった個人コレクションで最も感銘を受けたのが、ロンドンにある「コートールド・コレクション」でした。今回はこのコレクションのことを書きたいと思います。実は以前、知人に新婚旅行でイギリスに行くという人がいて、ロンドンの「おすすめスポット」を尋ねられたことがありましたが、私は「コートールド・コレクション」と答えました。新婚旅行から帰ってから、その方に「よかった」と、たいそう感謝された記憶があります。 サミュエル・コートールド サミュエル・コートールド(1876-1947)は、イギリスで繊維業を営んだ実業家で、フ…

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No.154 - ドラクロワが描いたパガニーニ

No.124「パガニーニの主題による狂詩曲」では、ラフマニノフがパガニーニの主題にもとづいて作曲した狂詩曲(= 変奏曲形式のピアノ協奏曲)をとりあげました。この曲が、ラフマニノフのパガニーニに対する強いリスペクトによるものだという主旨です。今回はそのパガニーニに関する話です。 フィリップス・コレクション アメリカの首都・ワシントン D.C.にある美術館の話からはじめます。今までの記事で、ワシントン D.C.の2つの美術館の絵を紹介しました。 ◆ワシントン・ナショナル・ギャラリー  メアリー・カサット 『青い肘掛け椅子の少女』 No.87「メアリー・カサットの少女」 フランシスコ・デ・ゴヤ 『セニョーラ・サバサ・ガルシア』 No.90「ゴヤの肖像画:サバサ・ガルシア」 ◆フリーア美術館  尾形光琳『群鶴図屏風』 No.85「洛中洛外図と群鶴図」 の2つです。私は一度だけワシントン D.C.に行ったことがあるのですが、その時は光琳の『群鶴図屏風』は展示してありませんでした。しかし運良く日本で『群鶴図屏風』の精密な複製(キヤノン株式会社 制作)を見られたのは、No.85 に書いた通りです。 ワシントン D.C.には上記の2つのギャラリー以外にも "スミソニアン博物館群" があります。自然史博物館とか航空宇宙博物館など、観光で訪れても飽きることがありません。しかしもう一つ(美術好きなら)見逃せないミュージアムがあります。フィリップ…

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