No.148 - 最適者の到来

No.56「強い者は生き残れない」で、吉村仁氏(静岡大学教授・当時)の著書である『強いものは生き残れない』(新潮選書 2009)を紹介しました。この本は "数理的アプローチ" による生物進化の研究成果を述べているのですが、最近それとも関連がある本が出版されたので内容を紹介したいと思います。アンドレアス・ワグナー著『進化の謎を数学で解く』(垂水雄二・訳。文藝春秋。2015)です。 著者はチューリッヒ大学の進化生物学・環境研究所の教授であり、本の内容は現代進化論の「不備」とも言える事項に解決の方向を提示した、非常に印象的なものです。本の原題は「Arrival of the Fittest」であり、「最適者の到来」という意味です。 現代の進化論への「疑問」 チャールズ・ダーウィン(1809-1882)から始まった近代の進化論は数々の発展を遂げ、現代では以下のプロセスで生物が進化してきたというのが定説になっています。 ①遺伝子(その中心となっているのはDNA)はランダムに突然変異を起こす。このことによって生物の形質が少し変化する。 ②その中から、生物の生息環境にとって最適なものが選択される(natural selection。自然選択=自然淘汰。)。 ③このような小さな変化が膨大に積み重なることによって、現在の生物の形ができあがった。 細かいことを言うとキリがありませんが、ごくアバウトに説明するとこのようになると思います。この中で素人しろうとにもわかりやすいのは「…

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No.147 - 超、気持ちいい

No.144 / 145 / 146 に続き、日本語の話題を取り上げます。No.144「全然OK」で、朝日新聞(2015年4月7日)に掲載された「"全然OK" は言葉の乱れ」との主旨の投書を取り上げましたが、再び朝日新聞の投書欄からです。 "めっちゃ" と "超(ちょう)" 2015年5月17日の朝日新聞の投書欄に、以下のような投書が掲載されました。 日本語と方言の豊かさ知って 東京都・無職・76歳(男性) 若者を中心に「めっちゃ」「超」という言葉が使われています。同じ意味の言葉は、ほかにもこんなにあります。 とても。非常に。大変。大層。甚だ。すこぶる。うんと。大いに。それはそれは。何とも。めっぽう。とびきり。べらぼうに。無上の。えも言われぬ。4月1日の本誌朝刊「折々のことば」にも「涯はてない」という、すてきな言葉がありました。日本語は何と豊かなことか。 方言も宝物です。昔聞いた、みそ会社のコマーシャルも忘れられません。亡くなった歌手の淡谷のり子さんが「たいすたたまげた!」と言っていました。みそ汁の香りまで連想させます。 中学生、高校生のみなさん、使う言葉の幅を広げ、方言も仲間に加えてみてはいかがですか。 朝日新聞(2015.5.17) 実はこの投書の横には別の投書があって「"半端じゃない" を "ぱない" と言う若者言葉は略しすぎで、言葉の乱れ」という主旨の、14歳の少女(福岡県・中学生)の投書が載っていました。言葉遣いに関心がある人は年齢を問…

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