No.134 - 音楽の意外な効用(1)渋滞学
No.128, No.129「音楽を愛めでるサル」の続きというか、補足です。
「音楽を愛でるサル」で紹介した研究(京都大学霊長類研究所の正高まさたか教授による)の要点は、以下の3つでした。
◆音楽の記憶は「手続き記憶=体の記憶」であり、言葉の記憶とは異なる。手続き記憶とは、
・覚えていることすら自覚しない
・覚えたつもりはない、けれども自分のからだが勝手に動く
たぐいの記憶であり、音楽の記憶はそういう記憶の一種である。
◆音楽は「認知的不協和」を緩和する働きをもつ。「認知的不協和」とは、「したくてもできない」という状況に置かれたときの心の葛藤を言う。この音楽の働きは、俗に言う「モーツァルト効果」の一種である。
◆ ヒト(霊長類)は、節ふしをつけて声を発することをまず覚え、そこから言語が発達した(と推定できる)。
このことに関係した話題を書きます。「音楽の意外な効果」と呼べるものですが、「渋滞学」に関係した話です。
渋滞学
東京大学の西成にしなり活浩かつひろ教授は『渋滞学』(新潮社。2006)という本を書き、大変に有名になりました。この本で西成教授は分野横断的にさまざまな渋滞現象を取り上げています。その中で、我々の非常に身近なものとして高速道路の「自然渋滞」が解説されています。高速道路で起こる各種の渋滞のうち、「事故」「工事」「合流」「出口」などの「通行上の障害」が原因のものは理解しやすいわけです。しかし不思議なのは自然渋滞です。自然渋滞の中…