No.124 - パガニーニの主題による狂詩曲
変奏という音楽手法
今まで何回かクラシック音楽をとりあげていますが、今回はその継続で、「変奏」ないしは「変奏曲」がテーマです。
No.14-17「ニーベルングの指環」で中心的に書いたのは「変奏」という音楽手法の重要性でした。ちょっと振り返ってみると、ワーグナーが作曲した15時間に及ぶ長大なオペラ『ニーベルングの指環』には、「ライトモティーフ」と呼ばれる旋律(音楽用語で「動機」)が多種・大量に散りばめられていて、個々のライトモティーフは、人物、感情、事物、動物、自然現象、抽象概念(没落、勝利、愛、・・・・・・)などを象徴しているのでした。そして重要なことは「ライトモティーフ・A」が変奏、ないしは変形されて別の「ライトモティーフ・B」になることにより、AとBの関係性が音楽によって示されることでした。
たとえば「自然の生成」というライトモティーフの変奏(の一つ)が「神々の黄昏」であり、これは「生成と没落は表裏一体である」「栄えた者は滅びる」という、このオペラの背景となっている思想を表現しています。また、主人公の一人である「ジーフリート」を表すライトモティーフの唯一の変奏は「呪い」であり、それは「ジーフリートは呪いによって死ぬ」という、ドラマのストーリーの根幹のところを暗示しているのでした。
もちろん『ニーベルングの指環』だけでなく、変奏はクラシック音楽(や、ジャズ)のありとあらゆる所に出現します。ベートーベンの『運命』を聞くと、第1楽章の冒頭の「運命の動機」がさまざまに変奏さ…