No.110 - リチウムイオン電池とモルモット精神

No.39「リチウムイオン電池とノーベル賞」(2011.10.15)において、リチウムイオン電池の開発の主要な部分が日本人によってなされたことを書きました。歴史的経緯を追って記述すると以下のようになります。 ◆水島 公一  1980年(当時、東京大学助手で、オックスフォード大学のグッドイナフ教授のもとに留学中)。リチウムイオン電池の正極材としての「コバルト酸リチウム」を発見。 ◆吉野 彰  1985年(旭化成)。世界初のリチウムイオン電池を完成。正極材:コバルト酸リチウム、負極材:炭素系材料 ◆西 美緒(よしお)  1991年(当時、ソニー)。世界初の商用のリチウムイオン電池を完成。ソニーが生産・発売を開始し、携帯機器用電池として広まる。 の3人です。そして隠れた功績者の一人として、 ◆白川 英樹  1977年(当時、筑波大学)。導電性ポリアセチレン(導電性高分子)を発見。のちにノーベル化学賞を受賞。 をあげてもいいと思います。導電性ポリアセチレンは吉野彰氏が電池研究に入るきっかけをつくり、最初の試作電池に使われたからです(No.39「リチウムイオン電池とノーベル賞」参照)。 西美緒よしお氏が「工学分野のノーベル賞」を受賞 以上の中で、最初に商用のリチウムイオン電池を開発した元ソニーの西美緒よしお氏に関する記事が最近の新聞に掲載されました。少々長くなりますが、興味深い内容なので全文を引用したいと思います…

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No.109 - アンダーソンヴィル捕虜収容所

No.104「リンカーンと奴隷解放宣言」の続きです。No.104では、朝日新聞の奴隷解放宣言についての解説記事(2013.5.13)の見出しである、  人種差別主義者だった? リンカーン という表現について、 ◆「人種差別主義者」というような言葉を新聞記事の見出しにするのは良くない。誤解を招く。 ◆リンカーンが生きた時代のアメリカでは「人種差別」が普通のことであり、現代の価値観で過去を判断してはいけない。 という主旨のことを書きました。 政治家はリーダーシップで国を導いていくものですが、同時にその国・その時代の大衆の意識や意見に影響されます。世論と極端に違う意見を、政治家は(特に国政の中枢に行こうとする政治家は)とれない。アメリカは民主主義国家なのです。 しかし見出しはともかく、朝日新聞の解説記事では奴隷解放とその背景となった南北戦争について、3つの重要な指摘をしていました。 ①リンカーンは人種差別の考え方をもっていた。 ②奴隷解放で形の上では平等になっため、逆に黒人に対する圧迫が強くなった。 ③南北戦争の死者は、第2次世界大戦での米軍の死者を上回る62万人であり、都市の徹底破壊や殲滅せんめつ戦が行われるなど近代戦の幕開けとなった。 の3点です。今回はこの3つの指摘について考えてみたいを思います。3つのうち、「①リンカーンが人種差別の考え方をもっていた」ことは、No.104「リンカーンと奴隷解放宣言」の「補記」で引用…

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