No.104 - リンカーンと奴隷解放宣言

このブログの記事で、今まで何回か歴史上の「奴隷」についての記述をしました。  No.18「ブルーの世界」  18世紀アメリカ(サウス・カロライナ州)において、奴隷制プランテーションで青色染料・インディゴが生産されたこと。 No.19「ベラスケスの怖い絵」  17世紀のスペイン王室での奴隷の存在。特に「慰み者」と呼ばれた異形の人たち。 No.22「クラバートと奴隷(1)スラヴ民族」  中世西ヨーロッパ(8~11世紀)における奴隷交易。奴隷になったのは中央ヨーロッパのスラヴ民族。 No.23「クラバートと奴隷(2)ヴェネチア」  同じく中世ヨーロッパ(12~15世紀)におけるヴェネチアの奴隷交易。奴隷になったのは黒海沿岸の人々。 No.33「日本史と奴隷狩り」  戦国時代の戦場における「奴隷狩り」と、ポルトガル人による日本人奴隷の「海外輸出」。 の5つです。その継続で、今回は「リンカーンの奴隷解放宣言」についてです。なぜこのテーマかと言うと、最近の(と言っても半年以上前ですが)朝日新聞に奴隷解放宣言についての解説記事(2013.5.13)が掲載されたことを思い出したからです。その記事の要点も、あとで紹介します。 奴隷解放宣言 そもそも「奴隷解放宣言」は、南北戦争の途中で出されたものであり、それはリンカーン大統領率いる合衆国(=北軍)が、南部連合(=南軍)との南北戦争を戦うための「大義」を「後づけで」示…

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No.103 - 遺伝子組み換え作物のインパクト(2)

前回(No.102)に続いて遺伝子組み換え作物(GM作物)の話ですが、今回は「GM作物の問題点」ないしは「懸念」です。 GM作物による農業構造の変化 GM作物(特に農薬耐性作物)は、農業の構造を大きく変化させると考えられます。このことが、世界的にみると数々の社会問題を引き起こしかねない。 まず、GM作物の種子を研究・開発する会社(モンサント社など)は、 ・商品価値が高く ・生産規模が大きく ・流通量が多く ・国際貿易量も多い 特定の作物にターゲットを絞るはずです。それは企業の売り上げを増やすためには当然の行為であって、この結果が「GM大豆」であり「GMトウモロコシ」です。「GM蕎麦」というのは永遠に出てこないでしょう。そんなものに研究投資をしても損をするだけです。 しかもGM作物は、非GM作物に比べて ・栽培が容易 ・生産コストが安い ・収穫量が多い という特徴を持っています。 これらのことが「特定作物の大規模栽培に農業を誘導する」ことは、容易に予測できます。その方向に進めば進むほど、農業としての「利益」を出しやすくなるからです。もちろん、国によって土地の広さや土質、気象条件、土地利用規制が違うので、進行の程度は違うでしょうが、一般論としてはそうなるはずです。この結果、 ・特定作物への集中 ・連作による土壌の劣化 ・中小農家の経営的破綻 ・土地利用形態の根本的な変化 などが起こる。毎日新聞はアルゼンチンにおけるGM作…

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No.102 - 遺伝子組み換え作物のインパクト(1)

No.100「ローマのコカ・コーラ」の最後の方に、  食料が企業に独占されると問題になる。その例が遺伝子組み換え作物(GM作物。大豆、とうもろこし、など) との主旨を書きました。今回はその遺伝子組み換え作物について、それがどういうインパクトを社会に与えている(今後与える)のかを書いてみたいと思います。以下、「遺伝子組み換え」という意味で、GM作物、GM大豆、GM食品(=GM作物を原料とする食品)などと記述します。GMは、genetically modificated(遺伝的に改変された)の略です。 GM作物の現状 GM作物は「アメリカ発」の農産物なのですが、我々日本人にとって無関心ではいられません。というのも、一人当たりのGM食品摂取量が一番多いのは日本人だと考えられているからです。東京大学大学院の鈴木宣弘教授が書いた『食の戦争』(文春新書。2013)から引用します(下線は原文にはありません)。 鈴木宣弘『食の戦争』 (文春新書 2013) アメリカの農務省高官(USDA)も語ったように、今では日本人の1人当たりのGM食品消費量は世界一と言われている。日本はトウモロコシの9割、大豆の8割、小麦の6割をアメリカからの輸入に頼っている。 GM作物の種子のシェア90%を握る多国籍企業モンサント社の日本法人・日本モンサントのホームページの解説によると、日本は毎年、穀物(トウモロコシなど粗粒穀物や小麦)、油糧作物(大豆、ナタネなど)を合計で約3100万ト…

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