No.98 - 大統領の料理人

No.12-13 で書いた「バベットの晩餐会」は、フランス人女性シェフを主人公とする「食」がテーマのデンマーク映画でした。最近、同じように女性シェフを主人公とするフランス映画が日本で公開されたので、さっそく見てきました。『大統領の料理人』です。今回はこの映画の感想を書きます。まず映画のストーリーの概要です。 大統領の料理人 主人公は、オルタンス・ラボリという名の女性料理人(俳優:カトリーヌ・フロ)です。映画は、オーストラリアのTV局のスタッフが南極にあるフランスの観測基地を取材するシーンから始まります。この基地には女性の料理人がいて、もうすぐフランスに帰国するようです。彼女は何と、数年前まではフランス大統領の専属料理人だったというのです。 映画は南極観測基地の料理人であるオルタンスを「現在」とし、彼女が「フランス大統領の専属料理人」であった過去を回想するという、いわゆるカットバックの手法で構成されています。多くを占めるのはもちろん「大統領の専属シェフ時代のオルタンス」ですが、南極観測基地のシーンも何回か出てきます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ フランスのペリゴール地方の農場のオルタンス・ラボリのもとへ、大統領府からの使者がやってきます。大統領の専属料理人になってほしいとの要請です。彼女を専属料理人に推薦したのは、フランスの高名なシェフであるジョエル・ロブションだと言うのです。 エリゼ宮にやってきたオルタンスは、主厨房のシェフ以下の男性料理人たちから敵意と嫉…

続きを読む

No.97 - ミレー最後の絵(続・フィラデルフィア美術館)

前回の No.96「フィラデルフィア美術館」の続きです。この美術館について、もう一回書くことにします。 Philadelphia Museum of Art East Entrance 側より ( site : press.visitphilly.com ) フィラデルフィア美術館のような「巨大美術館」を紹介するのは難しいものです。有名アーティストの作品がたくさんあるので、いちいちあげていったらキリがありません。そこで前回はあえて「あまり有名ではない画家の作品」を取りあげ、最後に1枚だけ(超有名画家である)アンリ・ルソーの作品を紹介しました。 しかし、ちょっと考え直しました。有名アーティストの作品をあげていったらキリがないけれど、 有名画家の、代表作とは言えないし傑作でもないけれど、印象に残る絵 なら何点かあげられると思ったのです。今回はその「印象に残る絵」という視点での紹介です。もちろん個人の印象です。 なお以下に取り上げる絵画は、フィラデルフィア美術館が所蔵している作品であって、常に展示されているとは限りません。美術館は展示状況をウェブサイトで公開しています。 カサット(1844-1926) まずフィラデルフィア出身のメアリー・カサットが「馬車で行く婦人と少女」を描いた作品です。 Mary Stevenson Cassatt(1844-1926) 『A Woman and a Girl Driving』(1881) (89.7 x 130…

続きを読む

No.96 - フィラデルフィア美術館

フィラデルフィア美術館 前回の No.95「バーンズ・コレクション」の続きです。バーンズ・コレクションから歩いて行ける「フィラデルフィア美術館(Philadelphia Museum of Art)」について書きます。 Philadelphia Museum of Art ( site : www.visitphilly.com ) フィラデルフィア美術館は、所蔵点数も多い全米屈指の「大美術館」です。3階建ての2階と3階が展示スペースになっていて、それぞれ約100の展示室があります。西洋美術では中世から現代アートまでがあり、また東洋・アジアの美術もある。江戸期の日本画も所蔵されているし、館内には日本の茶室まで造営されています。ちゃんと見るには1日がかり(でも時間がないほど)です。 しかも近くには別館があり、さらにバーンズ・コレクションとの間にはロダン美術館があって、この3つのミュージアムが共同運営されています。つまりフィラデルフィア美術館のチケットで3館に入場でき、チケットは2日間有効です。2日がかりで見学しなさいということでしょう。良心的なやり方だと思います。 しかし我々は前回に書いたように「ニューヨークからの日帰り」を前提にしているので「フィラデルフィア美術館の見どころ」だけに話を絞ります。バーンズ・コレクションと同じジャンルである「19世紀のヨーロッパ美術」と「アメリカ美術」です。 ちなみに、フィラデルフィアはアメリカ独立宣言が起草され採択された都市で…

続きを読む