No.81 - 2人に1人が買春

No.48「日の丸起立問題について」で、満州事変以降の新聞による戦争への誘導報道について書きました。 関東軍が満州事変を引き起こすと(1931)、大新聞は関東軍擁護・支那批判の論陣を張りました。満州での日本の行動を非難した国際連盟の調査団の結果が出ると、大新聞だけでなく全国の新聞社132社が共同宣言を出し、満州国設立の妥当性と国際連盟批判のアピールをします(1932)。日本が国際連盟を脱退して世界の「孤児」になったのは、その翌年(1933)です。 No.48「日の丸起立問題について」 歴史を調べてみると、満州事変以前は新聞もすいぶん軍部を批判する記事を掲載していました。この「軍部批判」とその後の「戦争誘導報道」には共通点があるというのが、No.48 に書いたことです。整理すると、 ◆満州事変の以前は、新聞もすいぶん日本の軍部を批判する記事を掲載していた。◆しかし満州事変が起きると軍部を擁護し、共同宣言まで出して、むしろ軍部の先をゆく報道をした。◆軍部批判と軍部擁護には明らかな共通点がある。それは「国民にウケる記事」という共通点である。軍部は横暴だ、軍人はえらそうにしていると苦々しく思っている人が多い時には軍部批判がウケる。日本はもっと中国大陸に進出しようと思っている人が多いときには軍部擁護がウケる。 ということでした。 現代の新聞はもちろん戦争誘導をしているわけではありません。新聞は(ほとんどの場合)事実を正確に報道しているし、社会の不正や歪みを明らかにしている。オ…

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No.80 - アップル製品の原価

No.58「アップルはファブレス企業か」において、アップル社が iPod / iPhone / iPad の組み立てを、巨大EMS(Electoric Manufacturing Service)企業であるフォックスコンの中国工場に委託しているこを書きました。フォックスコンに委託するメリットは人件費が安いということだけではなく、もっと大きなことがあります。つまりNo.58から要約すると、 ◆アップル製品の原価に占める「組立費」の割合は 5% 以下だと考えられる。 ◆アップル製品の販売価格からみた原価の割合(原価率)は50%以下だと考えられる。 ◆原価率が50%、組立費の割合が5%だとしても、販売価格に占める組立費は2.5%である。組立費のほとんどは人件費のだと考えられる。つまり、仮に人件費が倍になったとしても、製品価格を2.5%押し上げるだけである。人件費の影響はこの程度である。 ◆フォックスコンがアップルに提供している最大の価値は「機動力」である。製品組立ては機械化できず、人手に頼らざるを得ない。大量の新製品を一気に市場投入するといった「急激な需要変動」に耐えられるだけの機動力こそ、フォックスコンがアップルに提供しているものである。 ということでした。 このアップル製品の原価についての研究がアメリカ政府のホームページに公開されているのを最近知ったので、それを紹介します。 iPod の原価構造 アメリカ国際貿易委員会( ITC : United Stat…

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No.79 - クラバート再考:大人の条件

前々回と前回に書いた『赤毛のアン』は何回目かの「少年少女を主人公とする物語」でした。特に意識しているわけではないのですが、第1回が『クラバート』だったので自然とそういう流れになったのかも知れません。 取り上げた「少年少女を主人公とする物語」は、4つの小説と1つのアニメーション映画です。作品名、発表年、物語の舞台となった国、主人公の名前をまとめると次の通りです。 ◆クラバート(No.1, No.2)1971 ドイツ クラバート ◆千と千尋の神隠し(No.2)2001 日本 千尋 ◆小公女(No.40)1888 イギリス セーラ ◆ベラスケスの十字の謎(No.45)1999 スペイン ニコラス ◆赤毛のアン(No.77, No.78)1908 カナダ アン  一見してわかるように、5つの物語は発表年に100年以上の隔たりがあり、物語の舞台となった国は全部違います。しかしその内容には共通点があるように思えます。今回はこの「5つの物語」の共通点を考えてみようというのが主旨です。 5つの物語 No.2「千と千尋の神隠しとクラバート(2)」で、『クラバート』という小説は、一言で言うと少年が「大人になる物語」だと書きました。これは他の4つの物語でも共通しています。大人になるという言い方がそぐわないなら「主人公の少年(少女)が、自立した人間として生きていくためのさまざま…

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