No.76 - タイトルの「誤訳」
No.53「ジュリエットからの手紙」において、この映画(2010年。米国)の原題である
Letters to Juliet
の日本公開タイトルを
ジュリエットからの手紙
とすることの違和感を書きました。Letters to Juliet という原題は、世界中からイタリア・ヴェローナの「ジュリエットの家」に年に何千通と届くレター、つまり女性が恋の悩みを打ち明けたレターを指しています。映画のストーリーになっているクレアが書いた手紙はその中の一通です。しかし「ジュリエットからの手紙」という日本語タイトルでは、クレアの手紙に対するソフィーの返信のことになってしまいます。この返信が映画で重要な位置にあることは確かなのですが、原作者がタイトルに込めた意味を無視してまで、反対の意味のタイトルをつける意味があるのかどうか・・・・・・と思ったわけです。
大学入試の英文和訳で「Letters to Juliet」を「ジュリエットからの手紙」と訳せば減点されるし、そもそもそういう学力の人は入試に失敗するでしょう。しかし、日本語タイトルをつけた映画配給会社の担当者の英語力が劣っているわけはないはずです。何らかの意図があってタイトルをつけている。その意図はおそらく
興行成績を上げるために有利なタイトルは何か
という判断基準だと推測されます。「ジュリエットからの手紙」というタイトルが「興行成績のために有利」かどうかは知りませんが、あえて「誤訳」をするのはそ…