No.49 - 蝶と蛾は別の昆虫か

今回は言葉についての話です。No.18「ブルーの世界」の冒頭で、日本語における「青・あお」について書きました。補足も加えて整理すると、次のようなことです。 ◆日本語ではグリーンからブルーにかけての幅広い色を「あお」と表現してきた歴史と文化がある。特に、グリーンを「あお」という例は、青葉、青野菜、青物(市場)、青信号、青竹、青汁、青蛙、青田(買い)、青虫、青唐辛子、青海苔、青麦、青葱、青いリンゴ、など、いろいろある。 ◆東山魁夷画伯が風景画に使った、いわゆる「ヒガシヤマ・ブルー」は、グリーンからブルーにかけての幅広い色を「ブルー」で表現している。特に、現実には緑(ないしは暗い緑)に見える風景をブルー系統の色で描いた絵があるが、それに全く違和感がないのは、日本語の「あお」という言葉の伝統による(のではないか)。 東山魁夷 「夕静寂」(1974) (長野県信濃美術館) 人間は言葉で外界を認識します。外界の事物について、名前があるのかないのか、あるとしたらその詳細度合いはどうか、どういうカテゴリーで名前付けされているのかが人の認識に影響します。特に色は「連続変化量」なので名前付けは千差万別であり、外界の認識方法が端的に現れるものです。 人は言語で世界を切り取って認識している。言語は、その人の世界認識に影響を及ぼしている。 とうことをさらに考えてみよう、というのが今回のテーマです。 フランス語では蝶と蛾を区別しない No.17「ニーベルングの指環(見る音楽)」において…

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No.48 - 日の丸起立問題について

前回の、No.47「最後の授業・最初の授業」で、アメリカの公立学校で毎日、国旗に向かって唱えられている「忠誠の誓い」(The Pledge of Allegiance)について書きました。国によっていろいろと事情が違うのはあたりまえですが、感じるのはアメリカと日本の差異です。そこで日本の国旗に関する話を書いてみようと思います。No.37「富士山型の愛国心」で、以下のように日章旗(日の丸)に触れました。 「日の丸」が制定されたのは1870年で、現在まで約140年がたっています。この間、不幸なことに日章旗が国民を戦争に動員する道具のように使われたことがあったわけですね。それはざっと言うと、昭和に入ってからの約20年間です。この期間のことを指摘して、現在も「日の丸のもとに死んでいった人のことを思うと、国旗に起立はできない、それは思想と信条の問題」と言う人がいます。 思想・信条は個人の自由ですが、「日の丸が国民を戦争に動員する道具」だった時代は、日の丸の歴史の中では7分の1以下のごく短い期間なのですね。戦争体験者ならともかく、65年前に終わった短い期間のことに縛られて現在も行動するのは、建設的な態度だとは言えないと思います。思想・信条は個人の自由ですが・・・・・・。 今回はその補足です。国旗掲揚に対して起立しなかったため組織から処分を受け、それが裁判になっている件を取り上げます。 日の丸訴訟 2012年1月16日に最高裁判所で「日の丸訴訟」の一つに対する判決がありました。この訴訟…

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