No.8 - リスト:ノルマの回想

フランツ・リスト No.7「ローマのレストランでの驚き」 でベッリーニのオペラ「ノルマ」の中のアリア「清き女神よ」について触れましたが、この「ノルマ」に関連して、絶対にはずせない芸術作品があります。フランツ・リスト(1811-1886)のピアノ曲「ノルマの回想」(1836)です。 ショパンを称して「ピアノの詩人」ということがありますが、それならピアニスト・作曲家としてのリストはどうでしょうか。ショパンにならって言うと、リストはピアノの詩人であると同時に、小説家であり、脚本家、翻訳家、エッセイスト、書評家でもあると言えるでしょう。「翻訳家」としての仕事は、ベートーベンの9つの交響曲のピアノ編曲版のような一連の編曲作品(トランスクリプション)です。またリストには、オペラの旋律をもとに自由に構成した幻想曲風の作品、いわゆるパラフレーズと呼ばれる作品群があるのですが、これはらはさしずめ「書評」か「エッセイ」でしょう。ドニゼッティ、ベッリーニ、ヴェルディ、モーツァルトなどのオペラに基づいたパラフレーズがあります。 トランスクリプションやパラフレーズはリストが自らの超絶技巧を披露するために作曲したと言われることがありますが、それだけではありません。トランスクリプションやパラフレーズが作曲家リストの音楽をきわめて豊かにし、普通のピアノ作品の作曲手法にも影響を与えています。なにしろオペラや交響曲を2手や4手のピアノで表現しようとする試みなのですから並大抵ではありません。この作業が、ピアノ音楽…

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No.7 - ローマのレストランでの驚き

No.6 に続いて、海外旅行での「全く意外だった発見」の話です。 ローマに旅行した時の、ある日です。その日はローマ市内のあちこちに行きました。写真はその一つで、カピトリーノ美術館の「マルクス・アウレリウス帝の騎馬像」です。ローマ皇帝の騎馬像で破壊をまぬがれて残った唯一のもので、このあたりの詳細は、塩野七生著「ローマ人の物語 第11巻 終わりの始まり」の冒頭に詳しく書かれています。 とにかくその日はこの美術館だけでなくあちこちに行ったため、ホテルに夜8時頃に帰ってきました。夜も遅いし疲れたので妻と相談して、できるだけ近場で食事をしようということになり、ガイドブックにあったテルミニ駅近くのレストラン、というか「食堂」のような感じの店に入りました。名前は覚えていません。Trattoria とあったと思います。 イタリアを旅行してありがたいのは、レストランの食事の「ハズレ」がほとんどないことです。「大衆食堂っぽい」とろへ行き当たりばったりに入っても、これはまずい、という経験がありません(少なくとも私には)。これがA国やB国やC国だとそうは行きません。慎重に食事の場所を選ぶ必要があります。これらの国では、可能なら、①イタリアン、②日本料理、③中華料理、の優先順位でレストランを選ぶのが賢明です。日本料理と中華料理のプライオリティが少し低いのは、あやしい日本料理や、あやしいチャイニーズの店があるからです(もちろんチャイナタウンの店などに行けば安心です)。つまりイタリア以外でもイタリアンの店は最…

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